海外の文学2008/05/20 00:28

 毎年、各国で開かれている国際ペン大会が、2010年に東京で開かれることが本決まりになった。日本ペンクラブの会員で広報委員会の副委員長をやっていることもあって、国際ペン大会は大いに楽しみだ。何と言っても、全世界から有名な作家が大挙日本にやってくる。

 前回の84年の東京大会の出席者のリストを見ると、には、僕が作品を読んだことがあって好きな作家だけでも、カート・ボネガット、アラン・ロブ=グリエ、アラン・シリトー、ワシーリー・アクショーノフ、とそうそうたる名前が並んでいる。

 さて、それで、10年の大会には海外からどんな作家に来てもらいたいかと考えてみて、実は海外の作家についてあまり知らないことに気がついた。
 英米文学は、けっこう読んではいるのだが、アフリカ、アジア、南アメリカとなると、有名な作家以外はほとんど知らない。
 ということで、インターネットで検索してサイトを探して、「海外の文学」というページを作ってみた。http://www.asahi-net.or.jp/~hh5y-szk/kaigai.htm

 今後充実していく予定なので、乞うご期待。

http://www.asahi-net.or.jp/~hh5y-szk/

『ビールの教科書』2003/08/26 20:37

 ビールは難しい。もちろん、ワインも日本酒も難しいのだけれど、ビールはワインのように、何年の何は当たり年でおいしいとか、年代を語ることはない。だから、それほど難しくはないと思っていた。しかし、アメリカ、オレゴン州のポートランドで半年ほど暮らす機会があって、地元のいろんなビールを飲んで、わかっていたと思っていたビールが、訳がわからなくなった。
 ポートランドには、いろんなビールがあった。ポートランド“食べ過ぎ”日記(http://www.asahi-net.or.jp/~hh5y-szk/portland.htm)でも、レストランや食べ物、ビールについてもいろいろ書いている。ポートランドでは、スーパーマーケットに行っても、ピルスナー、スタウトなど、馴染みの名前のほかに、インディア・ペール・エールなど、聞き覚えのない名前のビールが多かった。
 ポートランドには、店内に、ビール醸造機を備えたビアレストランもあって、ビールを十分楽しむことができた。ポートランドでは、図書館にも行って、ビールの本も借りたりしたのだけれど、ビール全般のことが大まかにうまく把握できるような本は見つからなかった。世界中のビールメーカーとビールの銘柄をまとめて本は、面白くて役に立ったが、たとえば、“インディア・ペール・エールというのはどんなビールか”というのはどうもよくわからない。

 そうした疑問を持ったまま、アメリカ滞在を終えて、日本に戻ってきたが(といっても、別にビールの研究にアメリカに行ったわけではないが)、長年の疑問がようやく解決する本を見つけた。新聞の新刊広告で見かけて、タイトルに引かれて注文したのだが、思った通り、間違いのない本だった。
 『ビールの教科書』(講談社選書メチエ 1500円)の著者の青井博幸さんの経歴は面白い。京都大学工学部の修士課程を終えたあと、エンジニアリング会社に勤務。専攻はわからないが、ビールとはあまり関係なさそうだ。それが、自らビールメーカーを起こして地ビールを作り始めた。ビール好きが高じて、会社まで作ってしまったのかと想像してしまう。
 四年間創業後、ビール事業は売却、その後は経営コンサルティング会社に転換というが、それも、各地の地ビールの(味や製法の)デザインなどをしているらしい。福島の、「みちのく福島路ビール」も青井さんが設計したようだ。
 そうしたとにかくビールへの愛と情熱が伝わってくるのが、この『ビールの教科書』。メールマガジンとして配布していたものを元に書いたそうで、おそらく読者とのやりとりから、書き直したり、書き加えたところがあって、わかりやすい内容になっている。

 この本を読めば、ビールについて、基礎的以上の知識を身に付けられる。特にビールの種類と製法と説明がわかりやすく、しかも詳しい。
 たとえば、ビールの製法には、上面発酵と下面発酵がある。酵母によって、上面で発酵するものと下面で発酵するのがあるというふうに僕は理解していたが、実は、発酵したあと、酵母が下にたまるのが、下面発酵、上に浮かぶのが上面発酵だそうだ。青井さんは、さらに、上面発酵でも、温度を下げると、酵母は下にたまると解説している。
 さらに、上面、下面という区別より重要なのは、上面発酵(エール)は、18度~22度、下面発酵(ラガー)は、5度~10度という違いのようだ。これで、上面発酵/下面発酵についての長年の疑問が解けた気がした。

 また、インディア・ペール・エールというのは、かつてイギリスから植民地のインドへ、ビールを運ぶとき、気温の高い熱帯を通るので、ビールが腐敗してしまう(もちろん冷蔵庫などない)。それを防ぐために、アルコール度を高くして、ホップもたくさん加えたという話も面白かった。
 ホップは、今は香りと苦みのために加えているが、最初は、殺菌して腐敗を防ぐためのものだったのだ。
 本当に、この本は、無駄(?)な知識も含めて、ビールに関することがいろいろわかって楽しい。今の日本の発泡酒ブームや、同じようなビールばかり造っている大メーカーへの苦言も、納得できる。
 巻末に載っている地ビールのリストと紹介文を見ながら、日本の地ビールももっと飲んでみたいと思った。大メーカーのビールは止めて、福島路ビールを、もっと飲もうかと思っている。
2003/08/26
suzuki.yasuyuki@nifty.ne.jp
http://www.asahi-net.or.jp/~hh5y-szk/