大貫妙子のアコースティックライブ2007/05/20 10:55

 少し前の話になるが、4月30日、大貫妙子のアコースティックコンサートに出かけた(東京オペラシティ)。今年で20年目になるそうだが、最初の87年の赤坂のサントリー小ホールで開かれたコンサートにも、わくわくしながら行ったのを思い出す。当時は、ロック/ニューミュージック系のアーティストが、クラシック専門のコンサートホールで演奏するのはきわめてまれ。いつものコンサートとはずいぶん違う感じで見ていた。

 それ以来、大貫妙子のアコースティックコンサートには、たびたび出かけた。大貫さんの場合、アルバムの出る度に行われるライブは、どちらかというとロック色が強いが、アコースティックライブの場合、ドラムも含めて、ピアノ、弦楽器で、音響装置はさておき、楽器はすべて電気を使わないものだ。

 この形式のアコースティックライブは、その後、だいたい一年に一回くらいのペースで定期的に続けられた。彼女のMCによれば、「多くの電気楽器を使う通常のライブよりも、お金がかからないから」ということらしいが、拍手で盛り上がるようなロックのコンサートとは違い、観客はじっと息を詰めて聞き入る。聞くほうにも緊張が求められ、冗談ではなく一曲終わるごとに、ほっと息をつくという感じ。それだけに、一曲一曲、心にしみいるような旋律と歌声だった。

 実は、10年くらい前から、アコースティックライブには少しずつ疎遠になっていて、今回のコンサートは、三年ぶりくらいだった。毎回だいたい内容は同じ、感動は得られるけど、少しずついつも同じという感じがしていた。

 今回のコンサートの前には、アコースティックユニットで録音した新しいアルバム「ブックル・ドレイユ」が2007年3月21日に発売されている。それもあって、久しぶりのアコースティックコンサートに行くことにしたのだ。

 久しぶりに見た、アコースティックライブはずいぶん違っていた。肩の力が抜けているというのだろうか、以前は緊張感ピリピリで聴いていて、それでこその感動があったのだが、今回は同じ歌でも、ゆったりと楽しんで、しかも胸に迫る感動があった。

「ミュージック・マガジン」2007年4月号のインタビューで、大貫さんは、こんなふうに話している。
「やっぱり表現というものは、歳をとってきたほうが豊かになるのは事実だし、自分でもそう思う。昔の方が声のキラキラ感はあるんですけど、なんというか…、深みがないですよね(笑)」

 ああ、そういうことなんだと、思った。大貫妙子のアコースティックライブは、いまスゴイ。